レイモンド・フランズ(樋口 久 訳)
『良心の危機 ― 「エホバの証人」組織中枢での葛藤』(せせらぎ出版)
「根本にあるのは、クリスチャン、キリスト教と名の付く信仰に関係する人たちすべての生活に関わる事柄である。」(本書5ページ)
「エホバの証人についてとやかく言いたくなる人も、まずは我が身を振り返り、自分の宗教についても考えてもらえればと思う。」(本書10ページ)
「私としては、過去の過ちから多くを学んだと思いたい。これからも間違いはするだろうけれども、少なくともより良い方に進むだろうと信じている。自分自身のためにも、周りの人のためにも。」(本書447ページ)
日本国内には、20万人を超える「エホバの証人」がおられます。世界200カ国では、約550万人を数えます。かの「灯台社」の面々、中でも明石順三氏のイメージが良いのでしょうか、わが国でも「自分達の信仰に忠実に生きている人たち」という印象を与えることが多いのですが ... 本書をご覧になれば、現実からは程遠いそのような印象を与え続けることのできる組織の力と、それを支える人間の心理に驚かれることでしょう。
信仰の名のもとに、 冷ややかな力が、家庭生活から人命までをも左右する。その実態は内部にも外部にも一切知らせない。そのためには手段を選ばない ― 等々が具体的な事実として淡々と語られます。聖書を「解釈」することと信仰とはどのような関係にあるのか、そもそも「信仰」とは何なのかなど、様々に考えさせてくれる内容です。キリスト教会にとって極めて根本的な問題提起とも言えます。
著者は、この組織の 最高幹部の一員だった人です。この組織の歴史と内部の実状をこれほどまでに詳しく報告できる唯一の人物です。
『良心の危機 ― 「エホバの証人」組織中枢での葛藤』(せせらぎ出版)
「根本にあるのは、クリスチャン、キリスト教と名の付く信仰に関係する人たちすべての生活に関わる事柄である。」(本書5ページ)
「エホバの証人についてとやかく言いたくなる人も、まずは我が身を振り返り、自分の宗教についても考えてもらえればと思う。」(本書10ページ)
「私としては、過去の過ちから多くを学んだと思いたい。これからも間違いはするだろうけれども、少なくともより良い方に進むだろうと信じている。自分自身のためにも、周りの人のためにも。」(本書447ページ)
日本国内には、20万人を超える「エホバの証人」がおられます。世界200カ国では、約550万人を数えます。かの「灯台社」の面々、中でも明石順三氏のイメージが良いのでしょうか、わが国でも「自分達の信仰に忠実に生きている人たち」という印象を与えることが多いのですが ... 本書をご覧になれば、現実からは程遠いそのような印象を与え続けることのできる組織の力と、それを支える人間の心理に驚かれることでしょう。
信仰の名のもとに、 冷ややかな力が、家庭生活から人命までをも左右する。その実態は内部にも外部にも一切知らせない。そのためには手段を選ばない ― 等々が具体的な事実として淡々と語られます。聖書を「解釈」することと信仰とはどのような関係にあるのか、そもそも「信仰」とは何なのかなど、様々に考えさせてくれる内容です。キリスト教会にとって極めて根本的な問題提起とも言えます。
著者は、この組織の 最高幹部の一員だった人です。この組織の歴史と内部の実状をこれほどまでに詳しく報告できる唯一の人物です。
本書は、1999年4月に発行された Raymond Franz, Crisis of Conscience (Commentary Press) 第3版の日本語訳である。著者は、43年間にわたってエホバの証人であった。その最後の9年間は、その組織中枢である「統治体」の主要メンバーとして活躍した。そして、自分の所属する組織の行なっていることは、どう考えても聖書に合わないという結論に達した。本書には、その経過が詳しく述べられている。 したがって、端的に言えば、「エホバの証人」として知られる宗教団体の幹部だった人が、その内情を書いた本である。しかし、著者も言う通り、暴露本の類を 意図したものではない。むしろ、この組織の歴史、そして内部で起こったことを客観的に淡々と述べていく語り口は、かつての仲間たちに対する人間としての思いやりに満ちている。
一方、その観察は鋭く、深い。組織中枢において、年代予言をはじめとする数々の教理は、いかにして形成されてき たのか。予言がはずれたとき、いかなる不誠実な対応がとられるのか。エホバの証人の生命を左右することもある政治・軍務参加拒否の方針は、どれほど不条理 なものなのか。輸血に関する方針が変更になったとき、どのような対応がとられるのか ― 等々が、事実の描写として語られる。これを読んでいく読者は、この団体が持つ問題について深い洞察が得られると同時に、あらゆる団体が陥り得る危険につい て目を開かれる思いがするであろう。また、文献の裏付けも豊富なので、基礎資料的な役割を果たす本でもある。
現在エホバの証人と関わりのある人たちにとって極めて重要な文献であるのはもちろん、宗教に関わる人たち一般、 特にキリスト教会関係者にとっても、極めて本質的な問題提起を投げかける、必読の一冊だと言える。
一方、その観察は鋭く、深い。組織中枢において、年代予言をはじめとする数々の教理は、いかにして形成されてき たのか。予言がはずれたとき、いかなる不誠実な対応がとられるのか。エホバの証人の生命を左右することもある政治・軍務参加拒否の方針は、どれほど不条理 なものなのか。輸血に関する方針が変更になったとき、どのような対応がとられるのか ― 等々が、事実の描写として語られる。これを読んでいく読者は、この団体が持つ問題について深い洞察が得られると同時に、あらゆる団体が陥り得る危険につい て目を開かれる思いがするであろう。また、文献の裏付けも豊富なので、基礎資料的な役割を果たす本でもある。
現在エホバの証人と関わりのある人たちにとって極めて重要な文献であるのはもちろん、宗教に関わる人たち一般、 特にキリスト教会関係者にとっても、極めて本質的な問題提起を投げかける、必読の一冊だと言える。